2002年度 夏合宿 北海道沢登り 2002年8月8日~2002年8月14日

2002年度 夏合宿 北海道沢登り 2002年8月8日~2002年8月14日
‥中尾、米澤
夏合宿恒例となっている感もある北海道での沢登り合宿。山深く神秘的な北海道の沢は一見の価値あり。とおもって入山してみたら携帯電話がはいってしまい近代文明にただただ驚くばかり。

■記録

■8月8日(木)都内晴れ、道内曇り
羽田空港1330=1500帯広空港1520= <バス>=1535大正17号バス停1615=<ヒッチハイク>=1650大樹町=1800ヌビナイ川左岸林道終点C1
朝9時、部室に集合し、米澤が計画書を学生部に提出。ついに日高への扉が開かれた。
正門を出て、羽田へ向かおうとすると、そこには伊東コーチの姿が、わざわざ羽田まで見送ってくださった。羽田に着くと、帯広空港は雨、気温15度と電光掲示板が示しており、東京との温度差はなんと20度。11時15分離陸予定だが、予定時刻を過ぎても整備が出来上がらないとアナウンスが入り、結局、13時30分に別の機体で離陸。
曇り空の帯広空港に15時到着、帯広行きバスに乗り込み、大正17号バス停で下車し、各自明日の朝飯、炊きつけの新聞などを購入し、広尾行きバスを待つ。まだバスが来るまで30分ほどあるので、大きく「大樹」と書いて道路脇に立つと、間もなく一台の車が止まってくれた。帯広で買い物をして、広尾へ帰る途中とのことで、大樹へ向かっている間に、林道終点まで行って下さることに。しかし、道がわからないので大樹の営林署に寄ったところ、道順のほか、過去の遭難事故のことなど様々な情報と営林署仕様の地図を得ることができた(地図は記念にと)。その間に米澤は郵便局に行って、局留めで送ったガス缶と熊スプレーを回収する。
営林署での案内通りに道を辿り、18時頃、林道終点に着くことができた。
焚き火を起こして炊事をし、20時半床に着くが、雨が降り始め、次第に強く降り出すしたため、23時に林道を少し戻った高い場所に移動する。24時再び寝る。
ヒッチハイクさせていただいた辻田御夫妻、大変お世話になりました、どうも有り難うございました。

■8月9日(金)小雨後曇り
130ツェルト浸水-215土砂崩れ-400朝食-445周囲確認(停滞決定)-500ツェルト移動600

1時半ツェルト内が浸水し、目がさめたのでお茶を飲んでいると、近くで土砂が崩れる音がして驚かされる。土砂崩れは小規模であったが、水流の中で岩がぶつかり合う音も響いている。再びツェルト移動も考えたが、うとうとしながら眠れぬ夜がふけて4時になり朝飯を腹に入れる。雨も小雨になり、辺りも明るくなるにつれて少し安心して、周囲の状況を見てみると、結局、林道終点のもともと張っていた場所が安全かつ快適そうなので、小雨のうちに再び移動。この増水では、遡行できないので、停滞。
午前中は睡眠を取り戻し、午後は焚き火を囲む。
水も引いてきたので、明日は少なくとも、古い林道の終点までは進むことにする。

■8月10日(土)曇り時々小雨
330起床-530出発-700425m付近710-920507m中二股手前-1030幕営

幕営地からいきなり、支流を渡渉して行動が始まる。古い林道終点にはあっさりと着くが、ヌビナイ川右股川は水量のある立派な川となっていた。営林署で言われたように、左岸に踏み跡が続いており始めはそれを辿っていくが、何度かスクラム渡渉し、増水時の幕営点を物色しながら進む。渡渉ポイントの見極めが難しく、時間がかかり、507m二股手前まで4時間もかかった。
507m二股を空荷で見に行くと、二股から30mぐらい下流の右岸にいい幕営地があり、ここまでで予定以上に時間がかかってしまったため、ここで幕営することにする。引き返して、荷物を回収し幕営。ツェルトのフライを二枚持ってきていたので、一枚を本体の前にタープ状に張り、その下にタープが半分かかるように焚き火をセットした。

■8月11日(日)小雨後曇り
330起床(停滞)

朝起きると小雨で、昼間雨が降るかもしれないと停滞。昼間は曇りで水量が若干減少。

■8月12日(月)朝雨、後曇り
330起床-500待機-640出発-840595m850-1015655m手前1030-1115790m上二股1130-12301250m1240-1330ピリカヌプリ山頂1345-1530790m上二股幕営

夜は雨が止んだのだが、起床時間頃から降り出し、6時まで天気予報を聞きつつ様子を見て、雨も収まり出発。昨日よりも水量は減少していた。
渡渉して、小さい滝を左岸から巻き、ここから核心の右岸の巻きに入るが、赤テープもあり、踏み跡も明瞭であった。これを、落石と足元に注意して進んでいくとフィックスロープが張られていたが支点が悪く、逡巡してかなり時間を使う。
しっかりした立ち木から、φ8mm×30mのロープで確保し、かつフィックスにセルフを通して、なんとか通過したが、この先が不安になった。すぐに左岸のまきが、二つ連続し、トラロープのフィックスや、30m2ピッチロープを出したりしたが、相変わらず赤テープ豊富で、踏み跡明瞭、さらに支流が地形図によく対応しており、現在地確認も容易であった。650m付近の滝の巻きから上流の七つ釜を確認し、お約束の写真撮影、青と白、緑、美しくも怪しい光を放つ。七つ釜からの釜を持った滝や滑滝は快適に通過していき、約一時間で790m二股についた。
さらに、ピリカヌプリを今日中に往復することにし、食糧以外のアタックに必要ないものをデポして出発。二股からすぐにきれいな釜を持った滝や、10m、2段20mクラスの滝が出てくるがロープは出さずに登っていくことができ、滑滝は赤木沢にも似ていたが、赤木沢よりも水勢が強かった。結構ハイペースで登り、1250m三股に一時間で着くが、ここは四股といってもいい場所である。右から二つ目の急なガレ沢に入ってぐんぐん高度を上げていくとしばらくして、低潅木の中の踏み跡を辿るようになり、ついに主稜線に飛び出す。一気に視界が開けて、さらに5分ほど踏跡を辿るとピリカヌプリ山頂で、山頂からはやせた主稜線の先にソエマツや神威岳が連なっており、その東と西には深い谷が刻まれていた。
下りは結局ロープを出さず、滝は巻いたりクライムダウンしたりで済ますことができた。

■8月13日(火)小雨
330起床(停滞)

今日がソエマツを越えるリミットだった。天気は小雨で、大崩はなさそうであり、ソエマツを超えようか超えまいか、かなり迷いに迷ったが超えないことにしてしまった。午後はまた焚き火。白樺は燃えが悪いのだが他に薪が見つからず、午後からしょぼい焚き火を続けた。トガリネヅミらしき動物が何匹もいて、互いに出会うと取っ組み合いなどしていて面白い。
リミットは過ぎたので、ソエマツへのアタックと安全圏への下山に明日からは焦点を絞ることにし、早めに就寝。どうも焚き火をしていると、就寝が遅くなる傾向にある。

■8月14日(水)晴れ
330起床-500出発-700ソエマツ岳山頂720-920790m上二股950-1215507m中二股-1420ヌビナイ川左岸林道終点1500-1700同林道舗装終点1715=<タクシー>=大樹町

朝起きると一昨日と同じか、もっといい朝、アタック装備で出発。容易な滝が続き、どんどん高度を稼いでいくと、2時間ほどで水が消えると、お花畑の斜面にヒグマの掘り返した跡が広がる。間もなく主稜線に飛び出し、踏み跡を辿るとソエマツの山頂に出た。
神威岳が堂々と聳え、昨日行動しなかったことが悔やまれた。視界に広がる山並みに自分たちは飲み込まれてしまいそうだったが、自分たちの辿ってきたヌビナイ川右股が刻まれていることを確認できた。シャレで、携帯電話を出してみたところ、繋がってしまい、かなり興ざめしたが、この自分達が深すぎる山並みから浮かび上がるにはこれしか無いのかもしれない。
登ってきた沢を下ったが、途中、懸垂下降を2回、計3ピッチした以外はクライムダウンと巻き下り。米澤が先頭だったが、巻くにも懸垂にも中途半端な滑滝の下りではロープを出すなり巻くなりした方が良かっただろう。下級生を連れて行くような場合は、こんな所を下らせてはいかんぞと注意する。
790m二股でデポを回収し、ここからの下りでは絶対転ばないことをお互いに確認して再出発。順調に下降していき、巻き道では登りと同様にロープを出したが、途中の巻き道に熊の糞があった、ここで出会ってしまったら、逃げ場は無いぞ。507m二股手前で初めて他のパーティとすれ違った。
すでにぽかぽかと日が照り、流れは穏やか、とても登りと同じ川とは思えないのだが、単調になってしまった。まるで長い林道を歩いているような感覚になりながらジャブジャブ進み、靴の中に石ころの痛みを感じて、少し我慢すると林道終点に着いた。
安全圏に到達、おばさんが1人いて、連れは釣りに行ったらしい。荷物を整理し、靴を履き替えてひたすら林道を進み、路面が砂利からアスファルトに換わったところで携帯電話を出してみると電波は不安定だったが、米澤の執念で電波が繋がった。タクシーを待つ間、山との分かれを惜しんだが、間もなくタクシーが到着し、山に別れを告げた。

文責 中尾
■山行を終えて

■中尾
山から別れて
大樹で町営の風呂に入った後、バスで帯広へ。帯広はちょうど夏のお祭りで、バスで向かう途中、花火が上がっているのが見えた。そんな賑やかな帯広駅に着いてみると駅前の温度計は20度付近を指していて、僕らは寒かったが帯広の人達は、男性は半袖短パン、女性は浴衣で夏を満喫しているようだった。駅に荷物を置いて街へ出た。適当な定食屋に入ってビンビールを頼み、二人とも程よく酔いつつ帯広名物豚丼の大盛りをたいらげると、野菜炒め一皿を追加した。久しぶりに食う野菜らしい野菜がうまかった。
夜はステビバ、翌日、ヨネは道東一人旅へ、ホタカは帰京へ向けて帯広をあとにした。

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