北八ヶ岳ソロ縦走

場所:北八ヶ岳(蓼科山・北横岳)
日程:2019年3月5日~8日
メンバー:松原(2年)

 今回縦走したルートは、昨年2月頭に3人のメンバーで同ルートに挑戦し、私がバテてしまったためにあえなく撤退となった苦い思い出の残るルートである。本来なら同じメンバーで再挑戦する予定であったが他のメンバーの予定が合わず、単独でリベンジすることになった。冬山の単独での縦走は初めての経験であったため、入山する前は恐怖感と緊張が張り詰めていたが、入山したらそんなネガティブな気持ちは一気に吹き飛び、計画を完遂することしか頭に残らなかった。

行程の記録は以下の通りである。

3月5日 

茅野駅にてSB

3月6日

茅野駅5:00→女神茶屋6:00→蓼科山山頂9:25→蓼科山荘12:35→赤谷の分岐13:00→大河原峠14:45

3月7日

大河原峠7:00→双子山山頂9:15→双子池ヒュッテ10:15→亀甲池11:55→北横岳手前17:00

3月8日

北横岳手前7:00→北横岳北峰8:45→北横岳南峰9:00→北横岳ヒュッテ9:15→北八ヶ岳ロープウェイ10:30→五辻12:15→五辻あづまや12:30→出逢いの辻13:00→狭霧苑地13:45→冷山のコル17:45→渋の湯19:00

 ルート研究、昨年の結果及び今年の降雪状況を踏まえた結果、そこそこキツいラッセルになることは事前にわかっていたので正直怖かった。しかしながら、かつて一緒にこのルートに挑んだ仲間たちにリベンジ宣言をした以上、ビビって引き下がるわけにはいかないし、なにより何が何でもこのルートをやり遂げて自分の成長を感じたいという気持ちが強く、諦めたくなかった。

 今回の山行の目的の一つに体力作りを挙げていたので、過度な軽量化はせず、食べたいものや使いたい装備はためらいなく持っていくことにした。ザック重量は水なしで21~22kgくらいだろうか、思っていたより重くならずホッとした。

山行の内容に話を戻す。

3月5日

 茅野駅にSB。平日なのでSBする登山者は私しかいない。今年はやっぱり暖冬らしく、いつもは茅野駅前のロータリーの端の方に除雪された雪が残っているが、今年は一切無い。前の週にも天狗岳に入っていたが、その時も雪が少なく黒百合ヒュッテ前の丘は木々や岩が露出していたので、今年の積雪の少なさを実感させられた。いつもの芯まで冷えるような寒さもなく、本当に3月なのか疑問に思うほどだったが、とりあえず明日に備えて寝ることにした。

(平日深夜なので人っ子ひとりいない)

3月6日

茅野駅5:00→女神茶屋6:00→蓼科山山頂9:25→蓼科山荘12:35→赤谷の分岐13:00→大河原峠14:45

 茅野駅から50分ほどタクシーに揺られ、女神茶屋(蓼科山登山口)に着く。さすがにここまで来ると肌寒いので、さっさと進むことにする。6:00に出発し、非常にゆったりしたペースで進んでいく。最初の30分は絶対にスピードを出さず、体が温まるのをじっと待つ。蓼科山は登山口から割とすぐに急登が始まるのでなおさらスピードを出してはいけない。雪質はグズグズで柔らかく、所々で地面が露出している。いつもは凍っていることが多くて歩きにくい蓼科山急登であるが、今回は異常だ。

 途中暖かな日差しを浴びながら順調に高度を上げ、山頂の10分ほど手前でヤッケを着る。蓼科山は森林限界を超えると強風にいきなり晒されるので、体を冷やさないためにも木々がある内にヤッケを着用しておいた方が良い。

 山頂付近の地面は岩と雪のミックスになるかと思いきや、意外と雪が多く、山頂付近ではツボ足で脛まで雪に埋まる場所もあった。ノーアイゼンで進んだが、アイゼンありの方が安心して歩けたと思う。蓼科山頂の看板はほとんど埋まり、書いてある内容は読めない。去年の方が雪が少ない記憶がある。嫌な予感がしつつ蓼科山荘へ向かう方向を見るとトレースが無い・・・。心臓が強く波打つ。ラッセルは覚悟していたが、実際に自分が現場に立つと気持ちが昂ぶってしまう。そういう時が実は一番危ない時だと頭では理解しているが、心が収まらない。蓼科山荘から大河原峠までラッセルになるかもしれないから、なるべく急いで蓼科山荘まで着こうと思ったのが間違いだった。

 ラッセルの為にワカンを装着しながら、去年の苦い記憶を思い出していた。去年は蓼科山頂から蓼科山荘まで下りるのに通常30分のところ、ホワイトアウトしていたため道を間違えた結果、3時間以上も森の中を彷徨うはめになり、それが私のバテに繋がったのだが、今回もそうなるのではないかという予感が頭の中につきまとっていた。そしてその予感は的中した。早く蓼科山荘に着こうという一心で地図やGPSをしっかり確認せず、通常のルートよりも奥の場所から下降を始めてしまった。案の定森の中に突っ込み、踏み抜き地獄となる。そこからは引き返すこともできず、斜行しながら通常のルートに戻ることを決断する。10m歩いては踏み抜く、10m歩いては踏み抜くを繰り返してうんざりしていたが、「まぁ、このまま斜行していけば道にぶち当たるでしょ」と良く言えば楽観的に考えていたのでそれほど焦りはしなかった。やっぱり3時間ほどかかって蓼科山荘から七合目登山口へと下る道へと出る。そこから5分ほどかけて蓼科山荘に到着する。少し安堵。一休みして赤谷の分岐へと向かう。前日か前々日に誰か同じルートを歩いたようでトレースがある。こっち側にトレースがあるということは少なくとも北横岳まではトレースがあるなと思うと嬉しい半分、残念半分という気持ちになった。CTだと赤谷の分岐まで10分ほどだが実際30分弱かかった。いくら冬とはいえ、もしかして歩くの遅い?ショックだった…。

 赤谷の分岐から大河原峠まではトレースを追う形だったので快適そのもの。途中まではワカンを着けたままだったが、外したらだいぶ足取りが軽くなる。トレースがあるならツボ足の方が楽だと身をもって学ぶ(当たり前!)。道は明瞭かつピンクテープもしっかりあるので迷うことは無いだろう。

 大河原峠で幕営して、この日は終了。整地、テント設営、衣服の乾燥、食事作り、水作りetc…を1人でやるというのは大変なことだ。何回か練習すれば効率化のヒントを得られるだろう。初めての冬山単独で夜は正直怖かった。いつものグループ登山のような賑やかさなど皆無で、四方1km誰もいない。仲間がいることのありがたさを知った。気持ちを安らげるために音楽をかける。救われた。21時に就寝。

3月7日

大河原峠7:00→双子山山頂9:15→双子池ヒュッテ10:15→亀甲池11:55→北横岳手前17:00

 目覚めるとテントの天井が低くなっていて狭い。冬山でこんな現象が起こる原因は一つしか無い。無意識にシュラフから片腕を出し四方の重くなった壁を叩くと、ドサドサ音がする。昨晩かなり降ったようだ。あらかた雪を落とし終えて外を覗いてみると、昨日のトレースがほぼ埋まっている。見なかったことにした。

 7時前に出発し双子山山頂を目指すが全然進まず、標高100m進むのに1時間はかかっている。このままだと目的地までたどり着けないかもしれない・・・という不安をうっすら感じながら雪を踏みわける。途中ホワイトアウトしたり、道を間違えるなどしてタイムロスしたため双子山山頂には9:15に到着するも、ここまで2時間はかかっておりCTを大幅に超えているため休んでいられず歩き続ける。

 双子山を越えてしばらく歩くと樹林帯に入り、単調な下りとなる。10:15に双子池ヒュッテに着いて、ひと休みする際にあたりを見回すも景色は昨年と変わっておらず、思わず笑みをこぼしてしまう。「去年はここに3人で泊まったっけ、変わったのは人数だけか。」

 去年は池の上を歩いて進んだが、踏み抜き地獄でえらい目にあったので大人しく池の周りをぐるりと回って亀甲池を通過し北横岳へと向かうが、ラッセルでなかなか進まない。頭上に木がある時は良いのだが、ちょっとでも空が見えてしまうと大変だ。すぐに下の写真のようになってしまう。やっぱりワカンは厳冬期では役に立たない。

 亀甲池を過ぎると北横岳へと繋がる急登になる。ここは冬期ラッセルするとなかなかキツい。腹まで埋まることもあるので、そんな時は目の前にピッケルを横向きに刺し、それを支えに泳ぐに限る!(ザックの重さで潰れそう・・・)。ジタバタもがきながらジリジリ高度を稼いでいくも北横岳山頂手前で時間切れのため、急遽幕営してその日は切り上げた。夕食はスープとチョコバーのみ。

3月8日

北横岳手前7:00→北横岳北峰8:45→北横岳南峰9:00→北横岳ヒュッテ9:15→北八ヶ岳ロープウェイ10:30→五辻12:15→五辻あづまや12:30→出逢いの辻13:00→狭霧苑地13:45→冷山のコル17:45→渋の湯19:00 

 翌朝も7時前には出発して北横岳山頂を目指す。トレースなんてものは埋まってしまっているので朝から当然ラッセルだ。埋もれては這い上がり、埋もれては這い上がって気の遠くなるようなラッセル、あとちょっとなのに遠い・・・。ゼェゼェ息を吐きながら進むと急に景色に青が混じる。長かった・・・、北横岳山頂に8:45到着。

(奥に見える山が蓼科山)

 ここまで来たら、あとは当分楽勝だ。辛かったことといえば北八ヶ岳ロープウェイの誘惑を振り切らなければいけなかったことだろうか。(危うく乗るところだった)

 ここから五辻→出逢いの辻→狭霧苑地→冷山のコル→渋の湯へと歩いて行くのだが、五辻で緊急事態発生。水筒の蓋がうまく閉まっておらず、水が全て無くなっていた。さすがに頭を抱えたが、雪をかじったり雪と練乳と合わせてみたりして何とかごまかす(ちなみに練乳は行動食に最高だ。粘性が高いので喉にまとわりつき、渇きを誤魔化せるしカロリー補給にもなる上に片手で開けられる。皆も練乳を持っていこう!)。

 狭霧苑地まではトレースがあって楽勝なのだが、そこから先はトレースゼロで地獄の始まり。しばらくは常にピンクテープが視界に3~4つも入るので迷いようがないが、急にテープが少なくなったと思ったら、今回の山行の核心が現れる。

ここを対岸まで渡らなくてはならないのだが、とにかく雪の量が多くてキツい。腰より上まで埋まってしまい、なかなか前に進ませてくれない。結局対岸にたどり着くまでに30分以上かかった。

 この核心を含めた狭霧苑地から渋の湯までのラッセルは、今までのラッセルが可愛いものに思えるくらいキツかった。冷山のコル付近では100m進むのに1時間かかり、疲れた体に更に追い込みをかけてくる。そのうち辺りは暗くなり始め、一時はビバークするかも・・・と不安に駆られたが、ここまで来たならヘッデン行動になっても進んでしまえ!という気持ちが勝って進むことにした(この時は、絶対道を間違えないと確信するくらい集中していた)。道中ヒーヒー言いながらも19時頃に渋の湯に到着し、看板横の観音様に手を合わせ無事に下山できたことに感謝した。

 下山したその日は憔悴していた&時間的に風呂屋には間に合わなかったため急遽茅野駅付近のビジネスホテルに宿泊した。エネルギーを全部出したせいなのか夜中には熱を出して苦しかったが、暖かいベッドで寝たおかげで朝には回復した。恐らく茅野駅でSBしていたら悪化していただろう。翌日は鈍行でゆったり帰京。

 今回の山行は、私にとって2018年度の冬山縦走の〆に相応しいやり甲斐のあるものだったと自負している。このルートは危険個所はほぼ無く、完全に体力勝負&ラッセル合戦なので体力と時間のある学生に最適だ。やるなら天気予報をしっかり調べて、大雪が降った翌日にやると良いでしょう。ゴールした後の達成感と充実感が違います。私も来年また行こうかな・・・(その時はスノーシューでやります)。

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